ロールセンターとは、車体がロールする際の支点となる仮想の瞬間中心点です。音楽用具のメトロノームを思い浮かべてください。振り子のおもりを上下に動かすとテンポが変わります。これを自動車に置き換えると、おもりが車体の重心、振り子の支点がロールセンターにあたります。ロールセンターの位置は、サスペンションの3つの関節点とタイヤの接地点から求めることができます。
ローダウンすると車体の重心が下がり、まるでレーシングカーのように運動性能が向上するのではないかと誤解されがちですが、実際はまったく逆の作用が働きます。自動車のサスペンションは標準車高をもとに設計されています。そのため、ローダウンによってアーム角度や関節点に狂いが生じると、ロールセンターが重心の変化量以上に大きく下がり、結果的に重心から遠ざかってしまうことになります。
ロールセンターの狂いは、物理的法則をはじめとする諸々のモーメントにまで悪影響を及ぼし、それによって不快な乗り心地、直進安定性不良、ステアリングレスポンスの悪化、メカニカルグリップの低下、ロール量の増加など、さまざまな弊害をもたらす要因となります。